相も変わらず、毎晩なまぬるい夜風が頬を撫ぜていくことや、ごはんに添えられた辛味噌の味、車やバイクの間を縫ってすばやく道路を渡る技は、たった2ヶ月で、想像以上に私の身体にすっかり馴染んでいた。
それでも、今まで触れたことのなかった宗教文化の中で暮らすこと、フリーランスとして10数年働いていた私が会社員として高層ビルのオフィスの中で働くこと。30代半ばを迎えてもなお新しいきらめきをくれるこの暮らしを、たった2ヶ月で、想像以上に私は気に入った。
一日が過ぎるのがあんなにとんでもなく遅く感じていたのに、今ではさくさくと日々が進んでいるのがこわい気すらする。自分の中でマレーシアに住む期間にリミット(あるいはビザの更新とも言う)を設けているのだが、遠いと思っていた未来はすぐに来てしまいそうだ。
ずっと、この場所から(日本から)、離れたいと渦巻いていた気持ちはどこかへ消えた。でも、ずっとマレーシアに住みたいかと聞かれたら、それも違うかもしれないとも思っている。
新しい地でもこうやって暮らすことが出来る、一種のたくましさのようなものが自分にはあるという自負が大きくなった。カナダに住み始めた時も毎日毎日うまくいかなくてめそめそしていたけれど、何者でもない私でも、こうやって異国で生活を築くことが二度、出来ている。想像すらしていなかったが、この先また違う国に住んでみる未来まで考えられるようになった。
私が多く旅をするのは違う文化や人々に触れることが好きだからだが、旅でなくても、暮らしながらそうやって新しい価値観に触れていく人生は悪くないなと思う。むしろ、そうやって生きていけたらいいな、とも。私の身体にその国のスパイスが染み込んでいくことはとても好ましい。
初めて異国の地で迎えた誕生日はたしか10年ほど前カンボジアへ旅行した時で、小さなホテルのフロントのスタッフが、パスポートの誕生日を見つけて、ギフトを用意してくれていたことを思い出す。
誕生日を異国で迎えることが特別ではなくなっても、私の日常となったという証で、それは私にとって嬉しいことなのだと思う。
6月8日、誕生日でした。お祝いの言葉をくださったみなさん、ありがとうございます。今年はどんな年になるでしょうか。カフェ巡りの記事をメインに、マレーシアでの暮らしもマイペースに綴っていきます。このブログもよろしくお願いします。