「あぁ、きれい。」
つい口をついて出てしまう。
私の家は丘の上にあり、バンクーバーの街を見下ろすことができる。さみしげな真夜中、さぁ、やっと帰ってきたぞ、と思ったところで控えめな夜景と、遠くの山のスキー場のライトまで見え、いつも癒されている。
こちらに来てすぐ、夜のパートタイムジョブを始めた。
やりたい仕事にすぐ就けるかどうか分からなかったし、その間無職でいるのはとてもこわかったので、すぐに採用してもらえそうな日本の会社のフードトラックの仕事。と言ってもフードトラックで売り子をするのではなく、倉庫でソースをつめたりグリルを洗ったりする仕事だ。
グリルが重くて洗うのが大変だけれど、今までにやったことのない仕事はなんだか楽しい。それに、日本語を話せる貴重な時間だ。
7時か8時から始まって、11時、12時ごろに終わり、帰宅は真夜中。
今日もその仕事から帰ってきてシャワーを浴び、深夜2時になろうとしている。
この日記にはなんだかネガティブなことばかり書いている気もするけれど、今もまだバンクーバーにほとんど友達がいない。
街で楽しそうに友達同士でディナーをしているのを見たり、からりと晴れた休日に家族の声が聞こえてくるとぎゅうっとさみしくなってしまう。
仕事が終わり、がらんとしたバスに乗る方がさみしくなりそうだけど、悪くない。どこか落ち着くのは、深夜は一人でいることを許されているからかもしれない。