まさかこんなことになるとは思ってもみなかった。最後に日記を書いてから、世界がウイルスに覆われ、私はバンクーバーの地を離れ、日本に帰ってきてしまった。そうして、もう5ヶ月が経とうとしている。
本当は1年限りで日本に帰国する予定だったのだが、思いのほかバンクーバーのことを気に入ってしまい、ここに住むぞといよいよ決心がついた。さて、ビザの申請に移ろうとしていたところ、様々な事情で帰らざるを得なくなってしまった。
日本に帰ってきたはじめのうちは、家族と過ごしたり、ときどき友達と会えることはとても嬉しかったが、やはりここではない、と思い始めてから、毎日が辛くてしょうがないのだ。
バンクーバーへ行く前もそうだった。日々に重なる違和感に気づかないふりをしながら、いつかここから抜け出そうと思っていて、やっとの思いで逃げたのに。そしてここではない「どこか」を見つけた気がしたのに。
私のいる場所はここではないのだ。日本が眠りにつく頃に、起き出してくるバンクーバーの街の人々を思いながら、日々をなんとか終わらせている。